大分県玖珠郡探検隊 トンネル1
鹿倉隧道
かのくらずいどう 主要地方道 森耶馬渓線(旧道)
大分県玖珠郡玖珠町鹿倉
竣工 1891年(明治24年) 延長 118m

まず突入したのは、集合場所のドライブインの脇にあるという鹿倉隧道。
チョメさんが指差すのは現道脇のヤブ。



中央に見えるのが現県道の鹿倉トンネル。
目指すは旧道なわけだが、普通旧道のトンネルってのは
現道の隣にあるか、脇道を「上った」ところにあることが多い。

しかし、ここは違った。
旧隧道は現道の「右下にある」とのこと。

つまり写真中央、道路から少し下がったところに旧道がある。
確かに電柱が変なトコに立っている。
ずいぶん不思議な道もあったものだ。

旧道を拡幅するでもなく、その隣に土木で言うところの「切り盛り」して
現道を新たに設けたということだ。

※「切り土、盛り土」の略。ここの場合は現道の左側は切り土、
右側、センターラインくらいから谷側は盛り土。

まずはこの右側のヤブに突入することに。朝からハードだ。


藪の中でなにやら人工物発見。どうやら標識のようだ。
よく見たら二つならんで打ち捨てられている。


そして定番ジョージアオリジナル(旧)


しかし確かに旧道だったのだろう。路面はアスファルトが残っているし、
線形も林の中ながら保たれている。

そして奥に何か見えてきた…



薄暗い闇の中に何かが口を開けてます。


鹿倉隧道 耶馬溪側坑口

洞窟である。ここは一人では入りたくない。
この時点で既にみんなで来た事に感謝。

手前の斜めの人工物は上にある現道の電柱を支える支柱である。
というか、これが昭和40年代まで使われた隧道なのか…

はっきり言って不気味なのだが、たれぞ〜隊員はどんどん入っていく。
怖いものとかないんだろうか。



中は意外に落盤もなく通りやすいのだが、やはり落石は多い。
申し訳程度に施工されたモルタルも剥がれ落ちている。

さらに水が常に流れていてゴミだらけ。
なぜか福岡は中洲のキャバクラの会員カードがあったのが印象的だった。
誰が落としたんだこんなトコで。




ちなみに隧道が貫く岩盤は「耶馬溪溶結凝灰岩」と呼ばれる層だ。
溶結凝灰岩とは火砕流等で堆積した火山灰が、自分の熱で再び溶けて固まったもの。
溶け具合(溶結度)が進んだ凝灰岩は非常に硬く、亀裂が多い。
坑内あちこちで亀裂に沿った落石が見られた。


亀裂に沿って湧水が多い。





玖珠側の出口までやってきたが、なんですかこの有様は。
本来であれば左上の現道横に道路があるはずであるが…

時は16年前、平成3年秋。
九州はこれまでにない勢力を持つ台風19号に襲われた。
その際大分県はあちこちで森林がなぎ倒され大被害を受けた。

その時の風倒木が、なぜかここに放り込まれたみたいです。


鹿倉隧道 玖珠町側坑口

風倒木堆積物(ヤブ化済み)によじ登って撮影。
右側のでかいパイプは現道からの排水用。
おいおい、旧道は排水路かよ…。


右端が現道。中央に坑口。

見えん!



とりあえず現道に脱出する。

鹿倉トンネル 玖珠側坑口
かのくらとんねる 主要地方道 森耶馬渓線
大分県玖珠郡玖珠町鹿倉
竣工 1973年(昭和48年) 延長 -
しかしTBMで掘ったような円形断面だなこれは。珍しい。

※TBM:トンネルボーリングマシン。先に刃が付いた茶筒みたいなものを
回転させながらトンネルを掘るマシン。長大トンネルでよく使われる。




耶馬渓側に出てきて道の下を見ると確かに見える。
でも普通に車で通ってる人は気がつかないだろうな。

主要地方道 森耶馬渓線(県道28号線)

ちなみにここは鹿倉峠。県道森耶馬渓線の最高地点である。
明治時代、時の玖珠郡長村上田長は、玖珠地域から県北の中津の港への
物流ルートを計画。これまで街道もなかったこの地に新たな道を計画した。

しかし、工事は難航を極め、さらに当時既にあった中津への別ルートを
改修したほうが良いとする反対派に阻まれ、工事資金は枯渇。
さらに議会により村上は罷免され、新道建設は絶望かと思われた。
別ルートは勾配が急で、改修したとしてもとても物流に耐えられるものではない。
そんな中、工事は後任の菊村徳により郡直轄事業として
継続されることになり、明治24年ついに完成した。

完成した道路は「中津港道路」「耶馬溪道路」と呼ばれ主要街道として活躍。
戦後、主要地方道に指定され、鹿倉隧道も昭和48年まで共用された。

このレポートを書いている今、道路特定財源とか何とかの議論が日本中を席巻している。
土木業界にいながらこんなこと言うのはなんだが、無駄な道路は確かに要らないと思う。

しかし明治時代、確かに必要な道路が、今以上の困難をもって建設されていた。
そしてそれが地域の発展に寄与したのは事実である。

私財を削ってでも地域のために道路を通そうと奔走した村上の功績をたたえる
石碑が、今回待ち合わせに使ったドライブインの脇に建てられている。

参考文献:玖珠郡史,九州の峠(葦書房)
nagajisさんのサイトを参考に読んでみました
置いていた熊本県立図書館グッジョブ!



さて、探検隊一発目はクリア。

次に行きましょう→


←大分県玖珠郡探検隊TOPへ
トップへ
トップへ
戻る
戻る
2008.4.9


御経塚隧道
御経塚隧道
inserted by FC2 system