■そろそろ家に帰る時間ですよ〜■

二つの大物隧道を発見した我々。
旧耶馬渓町中心部から南下して、一ツ戸隧道を越えて既に旧山国町にいる。
あと一物件くらいは周る時間がありそうだ。

で、山国町と言えばあの隧道を忘れてはいけない。

それは過去幾多の廃道好きがおとずれ、そして人生観すら変えられてしまった隧道。
九州の廃道好きで知らないヤツはモグリだといわれてもやむを得ない隧道。

最強にして標準(スタンダード)の隧道

建設より約120年。
この地に威風堂々、そびえたつ金字塔がある。


恥ずかしながら管理人は行ったことが無かったので、
探索経験のある福岡の自転車のり氏、チョメ氏に案内していただいた。


耶馬渓 謎の隧道探索 ラストはいまさらながらの!
大石峠隧道


ここは中津市山国町と日田市の境界に程近い山道。

ここに大石峠(おしがとう)という地区がある。
そして同名の峠道が現在の地図にも描かれている。

(ちなみに「峠」を「とう」と読む地名は九州ではいくつかある。例「子別峠(こべっとう:熊本県)」)

 
国土地理院発行 2万5千分の1地形図 「裏耶馬渓」

現在は峠の下を国道212号線奥耶馬トンネルが通っているが、
峠道のほうには小さな隧道が描かれているのがわかる。

これこそが、泣く子も黙る問答無用の「大石峠隧道」。
噂だけはずっと聞いていた。写真も見た。

果たして実物のインパクトやいかに。



ということで、案内されるがままに山道に入ってきました。

古墳から出土したような看板が我々に注意を促す。



その通り、だんだんと道が妖しくなって来る。
既に車は通行止というか通行不能だ。

そして!



現れた。

「うわっは…」


「わっはっはっはっはっ」


僕はもう笑いしかこみ上げてこなかった。

出来れば事前情報無しでここに来てみたかった。

とにかくすごすぎて笑うしかない。



大石峠隧道 中津側坑口
おしがとうずいどう 中津市道…なの?
大分県中津市山国町大字長尾野
竣工 1989年(明治22年) 延長 72m

何がそんなに「Oh!エキサイティング!」なのか、写真ではわからないかもしれない。

見る限りは普通の素掘りの隧道で、大分県のあちこちにありそうだ。


でも…







デカイんです。
(マウス乗っけてサイズを確認)

中央で天に帰ろうとしている世紀末覇者の身長は168cmである。
この高さは異常。






いったいなんでこんな巨大な穴がここに開いてるんだ。
しかも変なトコに石があるぞ。やばいぞ。

これについては「日本の廃道」にてnagajis氏が考察を述べられている。
引用はしないが、要は「天井が崩落しながら広がっていった」

普通天井が崩落すればトンネル自体が閉塞する。
しかし、ここの凝灰岩は亀裂もなく均質だったからだろうか、
ドサッとは崩れずに、ゆっくり天井の表層が崩れていき
坑径がだんだんと広がっていったのである。


図示すればわかりやすいだろう↓




元々の路盤は、道路と同じだったはずであるが、
現在はずいぶん隧道内の路盤のほうが高くなっている。

nagajis氏は「このまま隧道は上昇し、いずれ尾根に達する」という
ダイナミックな仮説を立てている。



やべえ、見てえw

何百年後のことかはわからんが。



おし、では入ってみよう。


しかし怖いぞ。

この石群はどうもポコポコ抜けているようなのである。

しかも最近。




中に入れば、天井から崩落した凝灰岩が、さも「自分達が道です」と
言わんばかりに堆積している。だまされないぞ。

道がそんなにふかふかするものか!



天井からはやはり石が顔を覗かせている。
崩積した凝灰岩は真っ白で、砕けやすい。



しかしまあ、綺麗に広がっていったものだ。
昔も断面積は小さいものの、同じような形だったのだろう。
数学でいうところの「相似」ってヤツだな。


日田川坑口は激しく水が落ちていた。



大石峠隧道 日田側坑口

こっちはこっちでとてもヤバイ。
この石の数は…




道路面がはるか下に見える。
かなりの量の土砂が天井から崩落したのがわかる。

しかし、多くの隧道野郎達がここに立ち止まり息をのんだのもわかる。

この隧道はヤバイ。
現在進行形で崩れていっている隧道なんて見たことが無い。

いや、これは来ておくべきだった。

明治時代、ここに穴を掘った男達は、その穴が120年の時を越えてこのような形になり、
それをわざわざ見に来るヤツが絶えないようになるなんて思ってもいなかっただろう。



国道212号を望む

しかし、探索後道路わきで雑談していたら、車で通っていく地元の方々が
揃ってこっちをみて、笑っているのがわかった。

「またトンネル見にきとるわw」

みんなそう思っていたんだろう。お騒がせしてすみません。




さて、耶馬渓探検隊第一回目はこれにて完了。
一日に周った隧道3個。

しかし内容はホントに濃い口なものばかりだった。
体力もそろそろ尽きる。

耶馬渓。ディープな土地だ。
いずれまた探検隊を結成して乗り込むときが来るだろう。

そう胸に秘めて現地解散。

探検完了





第二回耶馬渓探検隊、絶賛準備中→

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2008.5.30


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