国東半島巡り 杵築市1
年田隧道
としだずいどう   杵築市道
大分県杵築市熊野
竣工 不明 延長 79m

いま僕は杵築市内なのだが…  どうやら道に迷い込んだようだ。


この辺にそれはそれはふる〜い隧道があるとの情報。
これは行かねばと張り切ったのだが、山に登る道に入っても
いつの間にか民家の庭にいたり、そのままバックで200m下がる羽目になったり。

どこにあるんだマジで。地図全然合ってねーように思える。

やはり、


帰省の途中、「ちょっと寄っていく」ところではないようだ。


ちなみに今日は1月の2日、世間はお正月。みんな箱根駅伝を見て、
リタイヤする選手を見ては「あら〜、むげね〜(かわいそう)」と涙してる時間帯だ。

そんななか、別の意味でかわいそうな僕はひたすら彷徨い、
道を聞こうとすれば 犬に吠えられる始末。

そろそろ日も傾いてくる時間帯だ。
最後の隧道レーダー能力を振り絞り見回せば、


山のほうに行く道あり。

怪しい。隧道の気配がする。

などと自分を慰めながらハンドルを切る。



なんか、えらい道に入り込んだような気もするが、
とりあえず進む。

とっとと隧道を探さねば、そのあと僕は、




家に帰る道を探さないといけないのだ(泣)




と、それまで山筋に平行に上っていた道が、不意に尾根方向へ曲がる。


体が反応する。 「くる!」




キタ━━━━━━)゚∀゚(━━━━━━ !!!!!

年田隧道 猪尾側(北側)坑口

ホントにあったよ。ありましたよ。
とんでもない洞窟が


完全素掘り。
さすがに坑口の土被り(どかぶり:トンネルの天井から地表までの厚さ)が薄すぎて、
どんどんトンネル延長が短くなっていっている。


中に入って振り返る。いつもこの瞬間がたまらない。
「明かりが見える〜」感。

さて、入ろう。

大体の大きさはこれで判断して欲しい。




中は比較的しっかりしているが…。

ぜひ大きな画像で見ていただきたかった。
フラッシュによって輝く凝灰岩と、それを覆う砂層の美しいクロスラミナ(斜交葉理)。
自然の造形美だ。(掘ったのは人間だが)
ただし、この層がとんでもないことを起こす!



トンネルの中ほどで、突然天井が高くなっている。
はじめは、昔の人が拡張しようとしてあきらめたのかと思った。

しかし違う。

手前側と奥側にざらざらした坑壁が見えていると思う。
凝灰角礫岩。火山灰と砂礫が固まったものだ。
そしてその間に白っぽい層。凝灰質砂層。火山灰っぽい砂の層。

その砂層に沿ってくさび形に掘り込まれた形になっている。

つまり、「ここだけ地層がやわらかいために崩落してしまった」痕跡なのである。
証拠・証言は無いが断言する。間違いない。

学術的に図示すると以下のようになる。






イメージできるだろうか。



さて進もう。



年田隧道 年田側(南側)坑口
路面は舗装されていて走りやすい。ただし、排水用に側溝が「掘って」あるので、幅は狭い。
エルグランドとかエスティマとかでは来ないほうがいいと思う。来ないか。


しかし、いつごろ掘られたものなのかさっぱりわからない。
生活道もしくは農作業用に今も活躍しているようだ。

古地図にはこの先にもトンネルマークがあったんでこの後探索してみたが、
該当箇所は大きく開削されていて、2車線の新しい道路があっただけだった。

ここから家に帰る道を探すのにさらに30分を要した。


おわり

※アップ後、杵築で育ったという「名もない通りすがり」様から貴重な情報をいただいた。
氏はこの隧道をよく通っていたという。さらに、氏のひいおばあさんが子供のころから
この隧道は存在していたという。高い確率で明治期のものであると考えられる。
貴重な情報提供、ありがとうございました。

※再追記:「名もない通りすがり」様より、「確かに15年ほど前に内部が崩落しました。」との
情報を頂いた。その際は数ヶ月間通行止めになったそうだ。
「間違いない」とか書きながらも、若干自信がなかったんで助かりました。
ホント貴重な情報提供ありがとうございます(H20.7.15)


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