特設ステージNo.7
薩摩街道 三太郎峠 「廃道をゆく2」への道

薩摩街道 三太郎峠 序
■プロローグ■

2009年の秋のことだった。

「日本の廃道」のnagajis氏とメールのやり取りをしていたときのこと。

「今度『廃道をゆく』の続編を作るんですけど、TECさんも執筆してくれません?



はい?


「廃道をゆく」って言えば、2008年に永冨さん(nagajis氏)と
「山さ行がねが」の平沼さん(ヨッキれん氏)という
廃道系インターネット界二大巨頭が中心となり出版された、

立派な商業出版物ではございませんか。

本屋さんで売ってたんでしょ?



両氏によって同時に発売された「廃道本」では永冨氏が「隧道大国」と銘打って
大分県の古隧道をコレでもかとフィーチャーしてくれましたので
僭越ながら私も写真だけですが提供させていただきました。




「今度は書くんですか?」

聞けば二人だけではネタも尽きるんで、全国の廃道者に協力を、
ってことになってるらしい。


まいったなあ。
普段はお金取ってないことをいいことに、アホな文章を
これでもかと書き倒して、あまつさえ全世界に公開しちゃって、
それが実の父親の目に留まってしまって困っちゃってるこの僕に、
商業誌の水準にあった文章なんか書けるだろうか。

だって真面目そうなんだもん、他の人たち。

でもまあ、
「自分が書いた文章が出版される」

っつーのは、普通に生きてたらあまり無いことなんで、悩んだフリして
二つ返事で「ぜひ書かせてください!」と返信しておいた。

で、問題なのは






「何を書けばよいのでしょ〜か?」


ということで、まあ内容は全国の廃道の紹介ということなので
ここは一発ドカンと「九州もすごいよ?」とキメてやりたいところ。

永冨氏より、「なんかデカイやつと、あと国東の古隧道なんぞあれば…」
というリクエストがあり。まあ国東に関しちゃ「自称餅屋」なんで
ちゃっちゃと「浜ノ上隧道」に決定。
古隧道というより洞窟に近いものなんで、全国の方にも喜んでもらえるだろう。


僕にとって廃隧道といえばコレだわやっぱ。

実家から車で1分だし、正月に帰ったときにでも写真を撮りなおして来よう。


問題は「でかいほう」だ


実はこの話を頂く前から自分でこのサイト用に情報を収集していた物件があり、
ほぼ机上での調査・旧版地図の取り寄せは済んでいて、あとは行くだけという状態だった。

問題はタダでさえ実生活での仕事が大忙しでサイトの更新もママならない状態で
その「廃道」をいつ攻略しに行くかってことだ。


このサイトで紹介するわけではない。
今度は「締め切り」っていうのがあるんだもちろん。

「編集者が待っているのだ!」

お〜、なんか物書きっぽいセリフだ(笑)


でもまあ、あと数ヶ月あるから大丈夫だろうとタカをくくって、

「nagajisさん、熊本の三太郎峠はいかがでしょう?」

と返信しておいた。あとでエライ目にあうのだが。



■さて、三太郎峠とは■

江戸時代、肥後の国から薩摩の国への街道が整備された。
その名を「薩摩街道」

島津氏の参勤交代ルートとしても使われた由緒正しきこの道。
現在はそれをトレースするように国道3号が走っている。


薩摩街道

今回行く「三太郎峠」は熊本県八代市〜水俣市の間にある峠。

しかしこれは固有の峠ではなく、北から
「赤松太郎峠」
「佐敷(さしき)太郎峠」
「津奈木太郎峠」
と続く3つの峠をを総称した名前であり、九州きっての難所として知られていた。



それを紹介する前に、なんでここが他所に比べて難所と呼ばれるか。
九州の地形に大きく左右されているので、ちょっとそれを紹介。


九州を北から南まで縦貫する国道3号。
北九州市門司区から熊本県八代市までは比較的なだらかな地形である。

九州在住の方は思い起こしてみて欲しい。
高速を使わずに国道3号で北九州から鹿児島に行くとしよう。

実際にやるとたまらんかもしれないが、ホントにやれと言っているわけではない。
想像で結構ですが、ヒマがある方はこれから出発してください。

北九州市を抜け、宗像市の手前、岡垣町で「城山トンネル」をくぐったあと、
次にトンネルがあるのは遥か彼方、熊本県八代市の「赤松トンネル」。

実に200km先なのだ。



「先なのだ!」とかいわれても、関東在住の方々からすれば
「そんなこと言われても。」かもしれないが、大分県産の僕からすれば
これは驚異的な距離。
トンネルを通らずに200km走れって言われてもちょっと思い浮かばない。
それだけ峠の少ない地域なのである。

さて、熊本県に入ってもだらーっとした平野や丘陵地を行く国道3号。
しかし八代市を抜け日奈久(ひなぐ)温泉郷を通り過ぎたあたりから
道は様子を変えていく…


三太郎峠はその、道が様子を変えていく入り口にあたる。

どんなトコにあるかを人工衛星写真で見てみると↓





分かりづらいかもしれないが、あんまり大きな画像を使うと
著作権的にごにょごにょ…
(Yahoo!地図さんから借りてきました。)

北の八代市は平野部も多く干拓も広く行われている。
ところが、その南では東(右側)からせり出してきた山地が、
そのまま海に突っ込んでいる。

ちょうどここに「臼杵−八代構造線」と呼ばれる大断層が走っており、
九州を北東〜南西に、この画像の右上から左下に袈裟切りしているのだ。
(興味のある方はGoogleEarthとかで九州全体を見てみてください)

これにより、地形・地質は南北に分断され、その南に位置する地域は
コレまでとうって変わってずーっと山地が海までせり出しており、
道を作るのに大変な思いをしなければならない場所となってしまっている。

三太郎峠はそういう場所を通る峠道。

長くなったが、











「そこに廃道があるのだ!」


■では出発■

三太郎峠について一言で言えば、

「三世代の道がそれぞれ独立して存在する。」

一つは江戸時代の街道。
そして明治時代に開通した国道。
そして現在の国道3号である。

メインの目的地はもちろん「江戸道!」

ただ、

簡単に「三太郎峠で」とか言っちゃったけど…


ホントにエライめにあった。



実際の踏査もなかなかのモノだったが、執筆という活動が
こんなに大変だとも思わなかった。

どのくらい濃かったかというと、

編集さんとの打ち合わせて、「廃道をゆく2」では、ここを
2ページ2600文字で取り上げることになっていた。

原稿を書いてみて、「少ないかな?はしょり過ぎたかな?」と思い、
文字数をカウントした段階で3400文字。

原稿用紙2枚分オーバー。

「廃道をゆく2」を読んでいただいた方には分かるでしょうが、
実際僕が書こうと思ったのはあの2倍。

撮影した写真は300枚を上回る。(本で使ったのは7枚)




本を書くって大変なことだったんだなあ…

ということで次ページより、伝え切れなかったことを紹介していきます。


さて、好きなだけ書くぞ→





その前に。

























「まだの人は買ってね。」



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2010.6.8


薩摩街道三太郎峠 赤松太郎峠1
薩摩街道三太郎峠 赤松太郎峠1
薩摩街道三太郎峠 佐敷太郎峠1
薩摩街道三太郎峠 佐敷太郎峠1
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