国道213号線 トンネルおまけ
もう無いトンネル・アラカルト


さて、前回までで国道213号線のトンネルは全てご紹介できた。

でも…
まだあるんだよ〜。

正確には「あった」隧道が。

僕が歩いた後には草木も残さない。
全部紹介してやる!



※ちなみに国道指定前に無くなっちゃったものもあるけど気にしない。

国道213号線 トンネルおまけ その1
鼓隧道(仮称)

国道213号線の半島西部の起源は明治34年完成の「沿岸道路」と
嫌というほど述べてきた。正直書いてても「また書いてるよオレ」だった。

それに対して半島東部、国東町から国見町にかけての起源については
ほとんど述べていない。これについてはマリアナ海溝より深いワケがある。

「最近まで知らなかった。」

ちゃんと調べてから書け。


で、現在の213号線、国東町にはトンネルが1箇所も無い

しかし国東町史には以下の記述が。
北部海岸道路は明治37年起工、同42年1月完成。隧道の連続する難工事」

このうち殆どは国見町の隧道を指していると思われる。

しかし、資料は無かったが、ひとつだけ国東町にあった。



ここは国東市国東町の奈良原から来浦(くのうら)に通じる切り通し。

ちなみについ最近大規模改修を受け、かなり拡幅されている。
それまでは右半分くらいの狭さだった。

高校のとき、自転車通学で毎日通っていたが、そのときから
「ここ、トンネルあったんじゃね?」とは思っていた。

そして総本山、国土地理院より届いた古地図。


昭和2年要部測量 五万分の一地形図「鶴川」
大日本帝国陸地測量部発行

やっぱりあった。


国土地理院発行 2万5千分の1地形図「富来浦」

この隧道、残念ながら昭和26年の地形図では既に開削されている。

つまり「国道213号線」であった時期は無い。

明治40年くらいから昭和初期まで使われた隧道であり、
その存在すら、既に地元の古老でなければ知らないものになっている。

とりあえず隧道があった場所には現在バス停があるので、
その名称をとって「鼓隧道」と仮称する。

つづみずいどう(仮称) 国道213号線原形(北部海岸道路)
大分県国東市国東町浜
竣工 明治37年〜42年の間 延長 長くて15m程度



国道213号線 トンネルおまけ その2
片辺隧道(仮称)

本レポートの「権現トンネル」で紹介させてもらったが、
気が変わってこんなページ作ったんでこっちに持ってきた。


さて、権現トンネルの前身に権現隧道があったことは上記の通りだが、
実はここにもうひとつ、かつて隧道があった記録がある。

昭和2年の地形図を拡大してみよう。

昭和2年要部測量 五万分の一地形図「姫嶋」
大日本帝国陸地測量部発行

西側の櫛来集落との間にある小さな岬に隧道マークが記されている。
名称も不明、国見町史にも記録が無い。

唯一記載があるのが、国見町の郷土史研究家廣末九州男氏の自費出版本である
「国東半島北浦部の地名を歩く」であり、氏によって「長さ10mほど」と記されている。

※ちなみにこの本は国東半島内の書店でならおそらく入手可能。地元民には楽しい本。


僕はここに隧道があったなんて記憶を持たない。

例によって彼らに聞いてみる。

親父「あー、そういやあったなあ。いつまでやったろうか…。
                 おい、お前は覚えちょらんか?」
「えー?いつまでやったかなあ。だいぶトンネルも減ったけんなあ。」

揃って記憶があいまいである。

って、トンネル減ったのかよ。今でもこんだけバカスカ穴だらけなのに。


ここが現場。多分中央の切り立った法面のあたりだろう。
ちなみに左の舗装が新しい道が旧道である。

小字名より、ここに片辺隧道(仮称)と勝手に命名。

竣工は北部海岸道路(西国東地区の沿岸道路に相当)建設時で
まず間違いないと思う。



国土地理院発行 2万5千分の1地形図「竹田津」

かたべずいどう(仮称) 国道213号線
大分県国東市国見町櫛来
竣工 明治37年〜42年の間 延長 長くて15m程度



国道213号線 トンネルおまけ その3
粟島隧道

明治中期に完成した半島西部の「沿岸道路」。
建設された隧道は現在もその殆どが改修を受けた形で現存している。

しかし土木技術の発達により、大規模開削が可能となったため、
「トンネル拡げるより、とっぱらったほうが早い。」という判断を
下されてしまったであろう隧道もいくつかある。

この粟島隧道もそんな隧道のひとつである。



ここは堅来トンネルの次の尾根。



正面に見えるなんでもないような切通し。
ここにかつて100m近い隧道があった。


明治36年測量 五万分の一地形図「高田」
大日本帝国陸地測量部発行

既往資料では昭和11年に改修を受けていることがわかっており、
その後昭和40年代に開削されてしまっている。

直前の堅来トンネルの最後の改修が1973年(昭和48年)であることから
おそらくこの時に開削されてしまったのだろうと考えられる。


国土地理院発行 2万5千分の1地形図「浜」

現在は隧道があった痕跡も無く、ただ直線的な切通しがあるのみである。

でも、


西側にあるコレ、たぶん粟島隧道の遺構だよね?

「高さ制限 4.3M」

制限してるけど、結構高いよ?4.3Mって。


あわしまずいどう 国道213号線
大分県豊後高田市字小林(旧制真玉町)
竣工
改修
明治29年〜34年の間
1936年(昭和11年)
延長 99m



国道213号線 トンネルおまけ その4
透留隧道(仮称)


上記の粟島隧道を抜け、一路西を目指す。



このあたりは最近も道路改良が行われており、小さな入り江くらいなら
迷わず埋め立てて直線化している。

どうやら国道213号線、現在進行中で第三次改修期に入っている。

実家に帰るたんびにあちこち景色が変わる。

上の写真の中央に海に突き出す尾根が見える。



ここも入り江が埋め立てられて、直線化している。
最近まで左に見える歩道あたりが車道だった。

写真奥、海側には写ってはいないが神社がある。
そして写ってはいないが切通しになっている。

「ちゃんと写して来いよ」というツッコミ覚悟の上の紹介だ。


明治36年測量 五万分の一地形図「高田」
大日本帝国陸地測量部発行

この隧道、昭和26年の地図にも載っている。
2年後の国道指定まで残っていたのなら「213号線だった隧道」だが、
いくら探しても明確な資料は見つからなかった。

とりあえず神社の名前から、透留(とうる)隧道とした。
tunnelwebさまのトンネルリストにも同名で記載されている。


国土地理院発行 2万5千分の1地形図「浜」

すぐそこには真玉トンネルが見えている。

とうるずいどう(仮称) 国道213号線
大分県豊後高田市中真玉字尾鷲(旧制真玉町)
竣工 明治29年〜34年の間 延長 短い



国道213号線 トンネルおまけ その5
赤坂隧道

さて、隧道多発地帯を抜けて、比較的平坦な、
そして真っ直ぐな道を豊後高田方面に走る。

正直、この隧道がいつ出来たのかわからない。
沿岸道路と同時期と思われるが、他の地域とは
若干地勢が違うので、あるいはそれ以前かもしれない。







既にリアス式海岸区間は終わっているが、緩やかな尾根があるため、
国道は切通しによって直線化されている。

写真は現道であるが、右側に旧隧道があったらしい。
写真が無いのは撮影時に当時の地図をまだ入手していなかったから。

今度帰省する時取り直してきますよカンベンしてくださいよ。



昭和2年修正測量 五万分の一地形図「宇佐」
大日本帝国陸地測量部発行

現在の国道は地図中の「赤」あたりを通っている。
地図を見る限りは沿岸道路と考えても良さそうだ。

しかし真玉町史を読んでいて、気になる記載があった。
というのが、上図のトンネルから西、ちょうど金屋地区を東に行く道がある。

コレも明治時代に整備の進んだ県道(当時)なのである。
この道はこのあと真玉町の山間部に峠越えしてつながる。
名を「長嶺往還」という。

この長嶺往還の説明書きに
「高田方面より、赤坂トンネルを経て〜」とある。

長嶺往還と沿岸道路。どちらが先に出来たかで、
赤坂隧道の建設年代が変わってしまう。

さらなる調査(ってか資料探し)が必要だ。

あ、一応国道213号線ではあったようです。




あかさかずいどう 国道213号線
大分県豊後高田市西真玉字赤坂(旧制真玉町)
竣工 明治年間 延長 -


以上、「もう無いトンネル・アラカルト」完了!



■ あとがき ■

ということで、なんだかんだ長かったですが以上で国道213号線ぶち抜きツアー終わりです。

合計40近い隧道を紹介してきたけど、自分の足元、地元の国道の
歴史をあらためて勉強しなおすことができた。

ってかこんなことやってるヤツ、地元にもいないと思うが…

実家に帰るたびに写真を撮りに出かけ、各自治体の図書館で
市史、町史を読みふけった。


実は213号線の隧道の歴史については、「廃線隧道のホームページ」管理人しろ氏が
「日本の廃道」にて既に3年前に詳細なレポートを発表されている。

今回の僕がレポートを書くにあたり、いろんな資料を調べ、
各隧道の歴史を時系列的に把握してきたが、全て彼のレポートを
なぞっているようなものであった。いま読み返して見れば。

そんな中で、地元民しか知りえない情報等を載せていくことで、
少しは地元民らしさを出せたかな?とは思う。

ともあれ、稚拙なページで半年間ダラダラ書いてきたから、情報が散りまくっている。
あらためて、全隧道を系統だってまとめてみようと思う。




いつかね



「国道213号線ぶち抜きツアー」全て完了!


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2008.7.13


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