国東半島巡り 香々地町6
見取隧道

おそらく国東半島一隧道の多い尾根のラスト。

一つ前からなんで更新に時間がかかってしまったのか。
あまり気にならないとは思いますが、後半明らかになります。



例によって東側の尾根から目的地を望む。
真ん中にぽっかり空いているのが見取(みどり)隧道だ。
ちなみに貴船隧道が右欄外にある。



尾根から降りていくと、一直線に隧道に突っ込んでいく。

ただちょっと様子がおかしい。

明らかに手前の道路幅が隧道の幅員の倍近くありそう。


様子がおかしいのはそれだけではない。


見取隧道 見目側(東側)坑口
みどりずいどう 豊後高田市道
大分県豊後高田市浜殿(旧制香々地町)
竣工 - 延長 34m

隧道直前で「止まれ」である。

「トンネル狭いから気をつけろよ」では無い。



↑国道213号

なぜか隧道の真ん前を国道が横切っている。



なぜ現道の法面(人工斜面)の途中にこんな穴が開けられているのか?





しかもコレである。斜め極まりない。

車で衝突しようものなら、運転席は国道を、助手席は隧道内を走って行きそうだ

しかも写真右奥から左折すれば写真左奥の隧道出口に達する。
ますますこの隧道の意味がわからない。


まあ、お気づきだろう。

この隧道は「国道によって入り口を削り取られた」隧道なのだ。

国道が尾根を切り開いてバイパス化される際に、もともとここにあった
見取隧道は残念なことに計画路線にかかってしまい、
そのまま削り取られてしまったのだ。かわいそう。


内部は吹付け、舗装されているが、あまり車は通らない。
まあ狭いし。せいぜい通学路になっているくらいだろう。




見取隧道 香々地側(西側)坑口


ちなみにこの隧道の形をじーーっと見ていると、
どうしてもアレを連想してしまうよね?








↓アレ

酒呑みのくせに好きなんです…



奥を横切っているのが国道213号である。
つまり国道→見取隧道→それを繋ぐ道路、が三角形を描いている。

子供の時は、コレが何のためにあるのかホントに不思議だった。


■ふしぎを解明していこう■

さて、じゃあ気合を入れて、この「バカスカ隧道掘られまくった尾根」の
歴史を時系列で整理していこうとおもう。
集めた地形図も総動員だ。

ちなみに図面の準備に2時間かける管理人は、
一応昼間はサラリーマンである。



明治36年測量

明治34年、西の豊後高田市から東の竹田津村(現国東市)まで
沿岸道路と呼ばれる県道が開通。
その際に貴船隧道が初めてこの尾根を貫く。

普通の地区ならコレで終わりのはずなんだが…



昭和2年測量

大正時代に入り、沿岸部の貴船隧道をうらやましく思ったのか、
少し内陸において道路改良が計画され、大正7年、「天越隧道」が完成。

さらに明治期より、香々地沿岸部から山間部に至る県道が整備されており、
これで内陸部に住む人も少しは交通の便が良くなった。

ちなみにその県道は現在の一般地方道653号小河内香々地線である。



昭和26年測量図

だんだんワケわかんなくなってきているが、まず昭和4年、尾根先端に宮岬道路完成。
そして昭和26年までになぜか貴船隧道の隣に見取隧道が完成する。

これが意味わからない。

隣に隧道あるんだから。

思うに雇用対策事業という面も持っていたのではないだろうか?
終戦直後ならありえないとも言えないし。

もしくはホントに「隣のトンネルうらやましー!」などと考えた人がいたのかもしれない。



昭和46年測量図

既にカオス。

順を追っていこう。
まず昭和29年、既に開通していた宮岬道路に塩屋隧道が掘られる。
コレでこの地域に4つのトンネルが出揃う。

この時期、地図の変遷を見ていただければわかるが、港湾の整備が進んでいる。
そのために、岬の両方の港をつなぐために掘られたのだろう。…と思う。

そしてメイン。
国道213号線の大改修が始まる。
昭和27年に国道に指定された沿岸道路はしばらくはちゃんと国道として働く。
その後、直線化させるため、山側にバイパスが建設される。

この時期だが、左端にある牛迫隧道の拡幅が昭和28年。
東側の竹田津隧道(二代目)の完成が昭和33年。

見取隧道を切り取ったバイパスはそれを繋いでいるように見える。
現在牛迫隧道のバイパスである香々地トンネルは昭和49年まで完成しない。

いつとははっきりしなかったが、見取隧道はおそらく昭和30年〜40年前半くらいで
見事にスラッシュカットされたものと考えられる。



最終的に昭和63年に天越隧道が片山トンネルに改修され、
一応のトンネル整備は完了する。

現在もすべての隧道が残っており、さらに周辺は旧隧道だらけ。
(国道213号ぶち抜きツアー参照)

トンネルがあればもう何もいらない!という残念な中毒に冒された方は、
是非ここに来て隧道原理主義国の真骨頂を味わっていただきたい。

普通の人は「トンネル多いね。ふ〜ん。」くらい思っていただければ御の字。




にぎやかな尾根、完了


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2008.9.14


第一循環隧道
第一循環隧道
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