特設ステージNo.5
旧椿隧道

旧椿隧道発見記 その2
■大捜索■

21世紀の初頭

トンネルの点検を行っていた僕と同僚S氏はなぜかリストに掲載されていた
謎の「第三の椿トンネル」を探して北九州市門司区を彷徨っていた。


ちなみにこの辺り


椿トンネルは新旧合わせて2本あり、旧のほうが昔からの「椿隧道(後に椿トンネルに改称)」
新の方は平成10年竣工の「新椿トンネル」である。
それぞれが現在県道の上り・下りに分かれて共用されている。





なのに、点検リストにはもうひとつの「椿隧道」が載っている。
ご丁寧に竣工年は不明だ。


上図を見ていただければわかるが、おそらく椿峠と呼ばれるであろう地点には
前述の2本のトンネルしかない。


辺りを見回すも、どうも道路トンネルなんてほかにありそうに無い。

この時点で僕らは縛られていた。

「道路」トンネルという言葉に…



まずは門司側の黒川地区を捜索してみる。



「だめだわ。トンネルどころか道すらない。」
S氏「椿ってくらいだから、現道から離れてるとも思えんが…」


我々は黒川側での捜索を早々に切り上げて、新椿トンネルを通り、
南側の柄杓田地区に回ってみた。

地形図上になにやら、尾根に向かって上る道があったのだ。



赤丸のところが目指した道(黒線)


しかし、現場はまったく地形図どおりになっておらず、
なにやら私有地のようになっている。
地形も改変されまくっているご様子で近づきがたい。

もちろん道路トンネルなんてありそうに無い。



「ワケわからんすね。どう考えてもこの二つしか無いですよ。」

実は歩き回ってこの時点で1時間が経過している。


S氏「ちょっともう一回門司側行ってみよっか。」

我々は上り側の椿トンネル(『新』では無いほう)を通って再び門司区黒川に出た。


「あれ?なんか怪しい道があるっすよ?」


椿トンネルの出口、切りとおし区間に、なにやらトンネルの上に向かっていく
道路が見えた。先ほどは気が付かなかった。




椿トンネル 門司黒川側  写真奥が南側になる。


赤線がなにやら見える道。舗装も無い里道だ。


S氏「ちょっと行ってみよっか。」

我々は道路わきの道を登っていった。



(あ、話は2001年だけど、写真は2008年に撮り直しに行ったものです。)



すぐ下には椿トンネルの坑口が見える。




「なんか尾根のほうに続いてますね。ちょっと行ってきますわ。」

僕はその里道をぐんぐん登っていた。




この時点で「道路トンネル」を探していることを忘れている。

S氏「あった?」

「いや、だめっすわ。尾根に出ちゃいました。トンネルないっす。」

我々は再び頭を抱えた。


本当に「椿隧道」と言うものはこの世にあるのだろうか?
なにか我々は幻を探しているのではないか?

しかしそれは北九州市が管理するリストに載っているのだ。



                           椿トンネル側→

ふと僕は現道椿トンネルのほうを見て、何かに気が付いた。

「ねえねえSさん。トンネルの上、平場が見えますよね。」
S氏「うん。見えるね。」



「あと、現道、かなり両脇の法面が高いですよね。
つまりかなり『切り込まれて』ますよね…。」

S氏「そんな感じやね。」

(↓マウス乗せてね)



「ってことは、この平場が原地盤(もともとの地表)じゃないすかね?」

S氏「だとすると… 椿隧道が椿トンネル建設以前のトンネルなら…」



「平場の奥…」




「あそこにあるってことに…」



嫌すぎる。





「でも僕たち道路トンネル探してんですよ?」

そうなんである。我々は先ほどまで車がびゅんびゅん通るトンネルの中を
防塵マスクで顔を覆い、覆工の点検をしていたのである。

あそこにトンネルがあっても、点検する意味が無い。




そもそもあんなとこにトンネルがあっちゃイカンだろ。




正直、僕の頭の中にはすでに小学校低学年のときに見たことのある
ひとつのイメージが浮かんでいた。


↓イメージ

浜ノ上隧道(大分県国東市)

S氏は実はすんごい都会育ちなので、あまり山に詳しくは無い。
しかし僕はといえば大分生まれトンネル育ちである。

廃隧道というものがこの世にあることは知っているのである。


とにかく行ってみようということで、我々は藪に踏み込んだ。


イバラが足に食い込む。

しつこいようだが「道路トンネル」を探しているんである。

もしこの先にあっても、それは絶対に道路トンネルではない。


2人して藪と格闘しながら、平場を進む。

S氏「この平場、もしかしてやっぱり道?」

いやなことを言う人だ。


僕はこれが道で無いことを祈りながら歩いていたのだ。
おそらく彼もそうであっただろうに。


そうなんである。言うまでも無いが、

2人してヘタレなんである。





平場も終わりに近づいている様子になってきた…
写真は明るく見えるが、実は夕方に近く、周りは薄暗い。













て,S氏「あ…」





ありやがった…

何であるんだよ… 予想通り不気味じゃん…


想像して欲しい。
あなた、薄暗い藪の中歩いていてこんなん見つけたらどうします?


早速反応する男がいた。


S氏「じゃ、じゃあオレあっち側に車回してくるね!(汗)」



「逃げんな!」



僕はついに出会ってしまった椿隧道に向かって歩き出した。

一人を引きずりながら…



つづく→


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2009.1.12


旧椿隧道03
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