特設ステージNo.2
第一,第二平淵隧道
地図から消えた平淵隧道 その4
■帰れない者たち■
地図から消された道にかつてあったという二つの隧道を求めた僕は、
完全廃道を突破し、一つ目の隧道にたどり着くことが出来た。
もうひとつの隧道もすぐそこだ。
ただし、僕を待っていたのは想像を超えた光景だった。
すぐそこに見えているだろうと思っていた第一隧道はやはりこの藪を
突破せねばたどり着けないらしい…
ここを最近通ったであろう測量士の方々も、必要最低限の伐採しかしていない。
当たり前のことだ。要は測量器から助手の持つ標尺が見通せればそれでいいんだから。
と、道の端に一本の雑木が目に止まった。
木なのだが、枝が無いのだ。というか片っ端から枝が落とされている。
なにか異様な怨念めいた空気を感じる…
現在の位置は廃道と思われる区間のちょうど中間あたり。
ここまで伐採・測量・また伐採と繰り返してきた測量士Aさんが
我慢の限界に達し、持っていたナタでその木にすべての怒りをぶつけた。
そんな妄想にとらわれていたら、目の前がまた明るくなった。
上を見れば切り立った崖。崩れた跡も生々しい。
また道が無いのか?
と疑心暗鬼になっていたらあっさりと第一隧道が姿を現した。
道もちゃんとあった。
当たり前のことを幸せに感じる。
人生もかくありたい。
第一平淵隧道 日出町側坑口
だいいちひらふちずいどう |
県道藤原杵築線(旧道) |
大分県速見郡日出町赤松
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竣工 |
不明(明治36年以前) |
延長 |
24m |
第二隧道はコンクリート巻きが施されていたがこちらは素掘りのままである。
おそらく第二のほうで何かが起こって、先に改修が行われたのだろう。
そんなことを考えながら近づいていくと、なにか様子がおかしい。
なんか心なしか形がいびつに見えるんですが…
( Д ) ° °
落盤…
(声を失っておりますので、画像だけお楽しみください)
天井がスポーンって抜けてるんですよぉ〜
で、ドサっとおちてんですぅ〜
ってか、何か起こってたのはこっちのほうだった。
落盤の規模自体はそんなに大きくなく、ご覧の通り隧道が閉塞するほどではない。
問題は、なんで落ちたか?ってコトだ。
地盤自体は凝灰角礫岩ってヤツで、亀裂が多いわけでもないし、土でもない。
もちろん坑内のほかの箇所に亀裂もなく、均質な岩盤だ。
少しやわらかいけどね。
おそらくすこーし、目に見えないくらいの亀裂が岩盤内にあって、そこを
大雨のときに水が浸透して、徐々に強度を下げたのではないかと考えられる。
一番下の写真で、右上の方のくさび状の崩落跡が若干色が濃くなっているのがわかる。
コレが水の浸透跡なのではないだろうか。
強度が下がってしまえば、ちょっとした大雨による地下水浸透や
ちょっと強めの地震でも容易に落下する。
などと正月から考えるのも仕事を連想して嫌なので先に進む。
杵築側を望めば、ここにもカラーコーン。
コーン自体は軽いんだけど、安定させる重りが意外に重い。
運んだのは僕みたいな下っ端のかわいそうな人だろう。
落盤した箇所以外はしっかりしていて、掘削の際に穿たれた
鑿(のみ)の跡も生々しい。
↑この程度のことではもう驚かない。
第一平淵隧道 杵築側坑口
さて、ここから先、杵築側はどうなっているんだろうか。
なんて愚問ですよ。
ここまで驚きの連続だったんだ。もう帰ろう。
現在午後3時45分。
意外に早かった気もするが、内容は必要以上に濃かった。
ということで、平淵隧道探索隊1名。これより撤収!
引き返します。
「帰る時は来た時よりも気が緩みやすい。油断するな。」
山の鉄則である。
でも…
これで油断できるほど、図太い神経もってないです。
斜めに切られた竹が凶器となって5秒に1回襲ってくる状態です。
↓
ざっくり逝きそうです。
と、
来る時は気がつかなかったが橋のようなものが見えた。
ってか、欄干が川側にしかないのは気のせいか、
つまり「桟橋のようなもの」ってことか?
残念ながら下を見るのが物理的に不可能。
「下川久保橋」と読める。
帰りに見えたのはこの橋だけだった。
日も傾きかけたので小走りで藪を突破。
午後4時10分、生還
全行程約1km。時間にして1時間と10分。
疲れた…。正月だというのに気がつくと汗をしたたらせていた。
さて、車に戻って帰ろう…
君ももう疲れただろう。長いことごくろうさん。
車も主を待っていた。。
今回の探索行程はだいたいこんなもん。第一隧道から引き返している。
で、
せっかくなので、杵築側からも攻めてみた。
↓上の地図の右端。神社のマークがある辺り
ちなみに道路はこの幅です。
どんどん進むと、向こう側と同じような空気。
「工事中につき車両通行止め」
どこからツッコんで欲しい?
もうそんな元気もないけどね。
最後に大きな画像で。
ここにかつては県道だった道路と二つのトンネルが眠っている。
地図から消え、山に還る道。
誰も通らないトンネル。
おそらくもう地図に描かれることはない。
さて、帰ろう。
忘れてたけど、家族とスキヤキが待っている。
最終章「地図から消えるまで」→
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