2009GW 突発OFF in国東

1日目 その1−2
最後の隧道 その2

地図にも載っていない。
それまで誰も知らなかった隧道を探しに国東町の
ある地区にやってきていたOFF隊。



目的の尾根に入山し、藪との格闘の結果、

「あったーーーーーーー!!」

との雄たけびを上げた。



それを聞いて駆け上がってくるnagajis氏。

いや、そのリュック置いてくりゃ…何が入ってんすか。

そして、そこに向かっていくメンバーを、
「待て!そこから入っちゃイカン!」
とさえぎる僕。

いったい何だというのだ!


ただし、みんな心得たものである。


まずは写真撮影会なのだ。

ほら、誰かが先に走りこむと、写真の邪魔になるでしょ?



みんなこの怪しい道の先にある暗闇にカメラを向けている。
そこには、



深江隧道(仮称) 東堅来側坑口

本当にそこにあった隧道が口をあけている。
予想通りの手堀隧道だった。これは古そうだ。

「いいっすか?じゃ、行きましょう。」


で、みんなでなだれ込む。

ちょっと特異なリズムだ。


で、中を覗き込んでみた。




あ…。

「どうなってるー?」と後ろから声がする。

「んっと〜、閉塞しててえ〜、それで〜、水が溜まってるの〜。」

それ以上でもそれ以下でもない。

そこには「隧道が無い」の次に想定される最悪の状態が…




で、この状態になる、と。
やっぱ変なリズムだ。


振り返って見れば立派な掘割があって、道もここだけ見ればきれいに残っている。
ここを数十年前は毎日小学生が歩いて通っていたのだ。

で、中をもう一度見てみよう。


taihei氏の撮影した坑口からの写真である。
さすが機材がまったく違う。すばらしい解像度だ。


ん?



んーーー?

光が見える。

坑口の右端から眺めると確かに光が見えた。


「コイツは閉塞していない。左にカーブしている!!」


予想外の事態発覚とともに、メンバーに異常が発生した。





                                               チョメ氏撮影
突然クツを脱ぎ始めるnagajis氏。

アンタ行く気なんすか永冨さん!

と、それを横目で見ていたtaihei氏も同様の行動をとり始める。
さすが海千山千のトンネル野郎達だ。
2人ともくわえタバコなのが印象的。

写っていないが僕も一服している。



「さーて、オマエはどうすんだ?言い出しっぺ。」

自問が始まる。


…。



「しょーがねーなあ…」

屋外で裸足になるなんて何年ぶりだホント…



鉄人たちは既に戦闘態勢。


僕もちゃぷんと、水の中に足を踏み入れる。


「イェヤァァァァ、つめてーーーー!!」

と、ひとしきり騒ぎながらもあとに続く。


                                              マフ巻氏撮影
こうして3人の短い冒険が始まった。


見送る人々を振り返って。
まっすぐ撮れてないところが、なんというか、その、精神状態



どうも中心部は深くなっているようなので、なるべく端を歩く。



だんだん見えなくなっていく人々を振り返って。




しかし冷たい。

その上、水の底に堆積しているのは砂ではなく、なんか粘土っぽい。

ここで、このヘタレ野郎の唯一の武器「地質学」全開。

「ちょっと待て。そもそもここの地質は礫(石ころ)と砂が固まったモンだ。」
「外部から川が流入してないなら、粘土ばかりってのはありえん。」
「じゃあこの、足の指の間をニュルニュル抜けていくものは何だ?」

答えは空中にあった。



先ほどから、大量のコウモリ君が周りをパタパタと飛び回っている。
どうも、ここも彼らの住処となっているようだ。
天井にはまだ多くのコウモリ君がぶら下がっている。気味が悪い。

で、彼らも動物なんで、「排泄行為」はあるわけで…



「イヤァァァァーーーー!!」



もうね、なんでこの上品な僕ちゃんがこんなトコを歩いてんの?って話ですよ。ええ。
衛生状態とか、ほんと考えたくない。

で、そんなニュルニュルの中にも石ころが混じってて、踏むともちろん痛い。


いいなあ、隧道探検してんなあオレ…

いろんなサイト様で見てきた「隧道強行突破」を自分がやってるよ。

もちろん一人だったら絶対にしないけど。


さて、隧道自体は150m程あっただろうか。
確かに途中から緩やかに左にカーブし、8割がた歩いたところで水が引き上陸できた。

と、


なにか石垣が隧道内に。
何だろう?崩れたとこを補修でもしてんのか。わからなかった。


しかし上陸しても、地面にはコウモリの排泄物が…

「これ、あとで車に乗ってもなんか臭いとか移りそうだなあ。」




って思ったら、3人ともオレの車じゃん!!

やっぱタバコってのは脳にも良くないんだよ絶対…


そんなことブツブツ考えてたら出口にたどり着いた。


坑口は半分近く埋まっていた。こちらのほうが坑口崩壊は激しいようだ。



トンネル内にも大量の土砂が入り込んでいるので、
出口はいきおい斜面を登る形に。


では、外に出てみよう。



おお、きれいだ…

だいぶ崩れてはいるものの、きれいな掘割が残っていた。
残念ながら時間的なものもあったのでこの先の道は確認していない。




「痛い痛い痛い!!!」


もうね…

ほんと痛かった。




深江隧道(仮称) 深江側坑口

北側を向いているため、全体的に苔むして緑色の景色だ。


しかしまあ、



エライ構図だよねこの写真。
こんな山の中に裸足が6本。

ひとしきり写真を撮った後、

隧道の中に向かって
「戻りますよ〜」と声をかける。

狭いトンネルなので、それ自体が伝道管になって
向こうで待ってるメンバーに声が届くだろう。便利だ。



彼らはその態勢のまま待っていてくれた。

しかし、そこで座ってても、中からは、ある男の

「イヤアアアアーーーー!!」
とか
「つめたいいいいいいーーー!!」
とか
「いてえ!石踏んだ!!」

って声が聞こえただけだと思うんだけど、何して待ってたんだろ。



無事帰還。



さて、隧道の脇は竹やぶになっていたんだが、そこに石碑が埋もれていた。


結構大きな代物で、字がびっしりと掘られている。

側面には
「道路工事夫力 両邑中 大正十一年十月建之」
と掘られていた。邑は村。

この隧道は大正十一年(1922年)完成と考えていいのだろう。

(あれ?以前聞いたおばあちゃんの年齢とお話からだと昭和初期になるんだけど。ま、いいか…。)



上のほう「隧道並道路記念碑」って書かれてるっぽいけど良く見えない。

で、こんだけ人数いるんだからってことで、

突然、清掃活動が始まった。

バキバキと笹竹を人力で倒していく。
いいのか?一応人の土地(?)だけど…。
ま、石碑の周りだけ。




体ごと竹を押さえてなぎ倒すnagajis氏。
いて良かった。




と言うことで現れた石碑の全景。
横に立つマフ巻氏だって、そんなに小さい人ではない。デカイぞこれは。

表面は道路建設に当たり寄付を行った人名と寄付金額が
びっちりと書き込まれていた。

笑ったのは左下。
少しスペースが空いていたのだが、明らかに後世になって
誰かが書き足そうとした形跡があった。あきらめてたけど(笑)



「隧道受負者」として吉武・岡野両氏の名前が刻まれる。

そのほかにも猪俣・花木・小笠原・田本といった苗字が多く見られる。
いずれもこのあたりに多く見られる苗字だ。

国東市内(旧東国東郡内)に限って言えば、
僕でも大体苗字を聞けばどのあたりに住んでいる人かおおよそ見当がつく。
僕自身珍しい苗字なので、地元の人に言えばピンポイントで
住んでいる地区を当てられる。

こういうのは全国的に田舎ではあることなのだろうか?
nagajis氏は非常に感心しておられたが…。



で、石碑の向こうにずっと竹やぶが続くのだが、これが昔の道のあとだろうか。
もはや確かめるのは人力では無理だが。




さて、下山してきた。隧道は写真中央部の尾根がへこんだトコだ。

先ほどのおじいさんにお礼がてら報告にと思ったが、お昼時だったので畑にもおらず、
ご自宅にも伺ったのだがどこかに行かれていたようだ。留守だった。


ここが、深江地区の小学生が隧道を通って通った旧堅来小学校跡。
現在は廃校になっており、子供たちはやや離れた富来(とみく)小学校に通う。


というかこの隧道。
りっぱな「文化財」だと思う。

以前行った萱切隧道が地元の偉人が作ったと言う「物語」があるため
地元でも保存活動が行われているが、それに匹敵するほどの
隧道だと思う。どうですか国東市教育委員会様。





さて、しょっぱなから大戦果を挙げた7人の男達。
幸先のいい一発目だった。


左より
福岡の自転車のり氏
その後ろに juncom氏
前でしゃがむ チョメ氏
中央に マフラー巻き氏
で、裸足の三人衆
てっく
taihei氏
nagajis氏

※ここでの裸足はもちろん演出です。山は適正な装備で歩きましょう。


さて、僕はこの地図にも載っていない隧道を「最後の隧道」と呼んでいた。

でも、下山途中nagajis氏にこうつぶやいていた。


「なんか…、こんなんまだまだある気がする…。」


だって国東だぜ?


続けていくぜ→


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2009.6.1


走水観音隧道リベンジ
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